Title: EPCネットワーク標準化システム概略 Author(s): Yojiro UO (yuo@iijlab.net), Shigeya Suzuki (shigeya@wide.ad.jp) Date: 2/5/2005 ------- Abstract: EPCglobalはRFIDシステムフレームワークであるEPCネットワークの 標準化および普及を推進するために2003年10月に設立された非営利法人 である。EPCglobalの前身はAuto-ID Centerであり、Auto-ID Centerが 提唱したシステムアーキテクチャを継承する組織である。 本文書では、ネットワーク型RFIDシステムの一つの標準となろうとして いるEPCネットワークの標準化システムを解説する。なお標準化組織二関 しては2004年12月現在のスナップショットを解説している。 ------- 1. EPCネットワークとEPCglobal EPC(Electronic Products Code)システムはマサチューセッツ工科大学 (MIT)を中心に1999年に設立されたAuto-IDセンターによって標準化が進め られていたRFIDとインターネットを用いた情報システムである。 1999年10月から2003年10月の4年間は主に大学組織を中心とした 活動が行われており、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)を中心に英 ケンブリッジ大学、豪アデレード大学、スイスのセントガレン大学、中国 の復旦大学、そして日本の慶應義塾大学に開設された研究拠点を中心に、 Walmart、P&Gなどをはじめとする小売製造販売業界、米国防総省、 EAN/UCC、三井物産などの利用者組織、サンマイクロシステムズやTIBCO、 凸版印刷や大日本印刷などの技術ベンダー、BTやNTTなどの通信事業者な どの幅広いスポンサー企業・団体によって実用化に向けての研究活動及び 実証実験が進められてきた。 近い将来の実用化が見えてきた2003年末に、実運用を視野にいれた活動を 強化する目的で、Auto-IDセンターはEPCglobalとAuto-ID lab の2組織に改 組された。EPCglobalは国際的な商品番号空間の付与および管理をおこなっ ているEANインターナショナルおよび、米国UCC.incの下部組織として実際 の産業への適用と実用化を主に担っており、Auto-ID labは継続したより先 進的な研究開発を行っている。 2. EPCglobalの現状 EPCglobalはEANおよびUCCの下部組織として位置づけられており、 EPCglobal incを筆頭に各国(もしくは各リージョン)毎にそれぞれのエリ アを管轄する下部組織が存在する。たとえば、EPCglobal.usや EPCglobal.canadaなどがそれにあたる。 2.1. Auto-IDセンターおよびEPCglobalの沿革 Auto-IDセンターからEPCglobal設立、そして現在にいたるまでの沿革を以 下にまとめた。 1999年に米マサチューセッツ工科大学を中心に、任意団体として Auto-IDセンターが設立された。安価なICタグを利用することであらゆ る物がコンピューターに認識される様な情報基盤の提供を目指した。 2000年にイギリスのケンブリッジ大学にAuto-IDセンター設立。 主にファクトリーオートメーションなどに関する研究を担当。 2001年にオーストラリアのアデレード大学にAuto-IDセンター設立。 主にRFID技術に関する研究を担当。 2003年に、日本の慶應義塾大学、中国の復旦大学、スイスのザンクト ガレン大学にそれぞれAuto-IDセンターが設立。それぞれ、インターネッ ト関連技術やアプリケーション技術(日本Lab)、デバイス技術(中国Lab)、 アプリケーションとビジネス(スイスLab)に関する研究を担当。 2003年夏に世界最大の小売業者であるWal-Martが納入業者上位100社に 対して2005年1月までにAIDC仕様のRFIDタグの貼付を行うことを義務づ けると発表。これを受けて加入者が急速に拡大、消費財流通を中心に 2004年末現在ユーザー企業143社、技術企業264社。 2003年秋にAuto-IDセンターは発展的に解消、保有する全ての知的所有 権を、EAN/UCCが出資・設立した非営利事業団体であるEPCglobalに移 譲。大学を中心とした研究アクティビティをAuto-ID Labsに改組。 2003年10月には米国防総省が同じく2005年1月までにEPCglobal仕様の RFIDタグの貼付を義務づけると発表 2004年秋にはヘルスケア・医薬分野の利用方法を推進するアクショング ループとしてHCLS-BAGが組織される。今後は自動車・防衛・旅客に焦点 を当てて活動予定(ロードマップより) 2005年1月時点では現行仕様である第1世代タグ(Class0/1)が利用さ れるが、2005年春以降は機能が強化された第2世代タグ(Gen2)が発売 される予定 2.2. EPCglobal参加組織 EPCglobalはAuto-IDセンター時代のスポンサー組織を元にさらに多くの企 業をユーザー企業および技術パートナーとして組織し、標準化を進めてい る。 2.3. 日本のEPCglobal関連組織 一方、日本ではEANの日本側受け口である(財)流通開発システムセンター (略称:流開センター/DCC)がEPCglobal Japanとして対外窓口となっている 独立した法人格を持っているわけでは無いが、専任スタッフが存在し 日本国内におけるEPCネットワーク普及に関する活動を行っている。 各リージョンでの普及や教育はAuto-ID labs活動分野でもあるため、 Auto-ID Labs Japanも相互に密接な協力関係を維持している。 3. EPCglobal 技術標準化フレームワーク EPCネットワークの技術標準化はEPCglobalの活動の一つである。 EPCネットワークの実現に必要な様々な技術仕様、運用規約、ポリシなどは EPCglobal内の標準化ルールに基づいて仕様化される。EPCglobalではこの 中で技術的および利用方法に関する議論および標準化を進めるためにITF (Implementation Task Force)を組織している。 ITFはその標準化のエリア毎に、それぞれアクショングループを組織して いる。2004年12月現在でITF内には以下の3つのアクショングループ (SAG/HAG/BAG)が存在する。主に利用者要求をBAG、技術開発をSAG/HAG、 先進研究をLABというように、標準化を行ううえで必要となる3つの側面を 満たしている。 - SAG (Software Action Group) 主にソフトウェア技術の標準化を行うアクショングループ - HAG (Hardware Action Group) 主にハードウェア技術(RFID無線技術)の標準化を行うアクショングループ - BAG (Business Action Group) 主にEPCネットワークの利用方法やユーザ要求の集約するためのアクショ ングループ。産業/業界毎に組織される。 現在は以下の2つのBAGが組織されている。 - FMCG-BAG (Fast Moving Consumer Goods) 一般消費財(FMCG)の流通管理へのEPCネットワークの適用を目的とし た議論を行う - HCLS-BAG (Health-Care and Life Science) 製薬などのヘルスケア業界でのEPCネットワークの適用を目的とした 議論を行う それぞれのアクショングループはEPCシステムのスポンサー企業やAuto-ID labs のメンバーから構成されている。EPCシステムの利用者の代表組織で あるBAGやAuto-ID Labから、標準化の必要性がある分野が提案されると、 ITF内の運営委員内で検討されたうえで、SAG、HAG、LABへ技術的/ 制度的 な検討が諮問される。 各アクショングループでは検討課題毎にワーキンググループ(分科会)が存 在しており、その中で議論を行う。 3.1. ITFと知的所有権(IPR)保護 EPCglobalはその標準化の議論の過程において極めて厳密な知的所有権の保 護を行っている。ITFに参加するためには、それぞれの企業がEPCglobalの 知的所有権ポリシーを認めてサインしなければならない。 また、各アクショングループの分科会に参加するためには、IPRにサイン した企業の構成員であったとしても、個人の資格で分科会毎に存在する opt-in文書にサインする必要がある。 3.2. SAG: ソフトウェアアクショングループ 2004年12月現在でソフトウェアアクショングループに存在するワーキング グループをまとめた。 ONS分科会 EPCネットワークのネームサービスを検討 EPCIS分科会 EPCに関連する情報サービスのフレームワークを検討 Reader Management分科会 RFIDリーダーライターの管理フレームワークを検討 Reader Interface分科会 RFIDリーダーライターと上位コンポーネント間のプロトコル・APIを検討 Filter and Collection分科会 リーダーからの情報の取捨選択、上位コンポーネントへのルーティング Security分科会(エキスパートグループ) EPCネットワークのセキュリティ的脅威の解析、分析 Tag Data Translation (TDS sub-group)分科会 EPCの汎用的な書き換え・変換システムに関する仕様化 (BAG TDS-WGの技術的サブ分科会) 3.3. HAG: ハードウェアアクショングループ 2004年12月現在でハードウェアアクショングループに存在するワーキング グループをまとめた。 Gen2 (UHF Generation 2) UHF帯で利用できる統一規格RFIDタグのエアプロトコル、機能セットの 仕様化 4. まとめ 本文書は、EPCネットワークの標準化をおこなうEPCglobal関係の2004年末 現在の公開情報をまとめている。主にAuto-ID分科会が検討のターゲットと しているEPCネットワークを理解するための参考資料を提供することを目的 としている。 ----- Copyright Notice Copyright (C) WIDE Project (2005). All Rights Reserved.