Title: 2004年度に於けるComet regulatorの研究報告 Author(s): 下國 治 (osamus@labs.fujitsu.com) Date: 01/07/2005 1. Comet Regulator Comet Regulatorはストリーム通信のパケット間隔を均一化(ストリーム平滑 化)し、バースト通信を抑制することにより、ネットワーク機器でのパケット 欠落を防止して通信品質を保つことを目的とした研究である。本研究は2003年 度に開始し、2003年度は測定器を使用した実験およびLIVE!Eclipse (11月)で のフィールド実験を実施した。 Comet Regulatorの特徴は以下の通りである。 1) ネットワーク的にはL2機器として存在し、IP機器の設定変更を必要とし ない 2) 富士通研究所がネットワーク処理のオフロードを行う研究で開発した Cometネットワークアダプタで処理を行い、10μ秒の精度で実時間制御が 可能である 3) アダプタ上のARMプロセッサに対するファームウェアで実現しており、ソ フトウェアでプログラミング可能である 2004年度に行われたDVTSの相互接続実験では、バースト性の高いストリームに よって画像が再生できない状況になることが報告された。これはデータ通信速 度とネットワーク速度に差があると、実装によってはネットワークの速度でデー タを連続して送出してしまいバースト状態になるからである。一般的な送信マ シンの接続ネットワークが1Gbpsへ移行しつつある現状ではストリーム平滑化 の需要は増大すると考えられる。 2004年度は以下のように機能拡張、測定器を使用した実験を行った。 2. 新ハードウェア対応 Cometネットワークアダプタの世代交代に対応して、2003年度に使用していた Comet i-NIC-2RからComet X2b (いずれも開発コードネーム) に動作プラット フォームを変更した。単純なブリッジング性能を比較して、旧版の700Mbpsか ら900Mbpsへの高速化を達成した。 3. 機能拡張 2003年度の実装では、ストリームの識別をIPアドレス単位で行っていた。これ は大多数のマシンでは高々1ストリームしか受信しないので、処理の軽減を狙っ たものである。しかし、サービスの内容でストリーム平滑化を行うか否かを変 化させたり、NATの利用など一つのIPアドレスで複数のストリームを受信する ことに対応させるため、ポート単位のストリーム識別を行うよう変更した。 ポート単位のストリーム識別を行う為には、IPフラグメントに対応する必要が 生じる。もともと、2003年度の実験の際にはIPフラグメント対応処理の計算コ ストと効果から判断してIPアドレス単位の識別を行った経緯がある。今回、フ ラグメント対応処理を行うためにデータの流れを刷新し、プログラムの大幅な 変更を行った。その結果、後述するように懸念していた処理速度の低下は小く 押えることができた。 また、ストリーム毎の動作を設定ファイルで記述することができるようにし、 運用を容易にした。尚、パケット間隔制御の算法は2003年9月のWIDE研究会で 発表したPID制御方式から変更は行っていない。 4. 測定器による実験 新しく実装したComet Regulatorで単一ストリームを平滑化させ、望む動作を 実現していることを確認した。 アジレント社のRoutertesterという測定器では任意のバースト長で、任意のIP アドレス、ポートを持ったストリームを複数発生させることが可能であり、こ の測定器を使用して性能を測定した。その結果、3000ストリーム、合計 750Mbpsを平滑化することが可能であることが確認できた。これは LIVE!Eclipseの際に処理した400ストリーム、50Mbpsの最大流量から見ても充 分に実運用に供せる性能であると判断できる。 5. 今後の予定 Comet Regulatorの研究は一応の収束段階にある。現在採用しているストリー ム帯域計測法は長いバースト周期の場合、振動するおそれがある。現在のとこ ろ特に不都合がないが、今後問題となる場合には測定法および制御法を見直す ことになろう。