WIDE Technical-Report in 2007 計測に関する2006年度国際協調活動報告 wide-tr-mawi-collaboration2006-00.txt WIDE Project: http://www.wide.ad.jp/ If you have any comments on this document, please contact to ad@wide.ad.jp. ^L Title: 計測に関する2006年度国際協調活動報告 Author(s): 長 健二朗 (kjc@iijlab.net) Date: 2007-01-31 計測に関する2006年度国際協調活動報告 1. はじめに WIDEプロジェクトは多くの国際協調活動を行なっているが、近年は計測研究の 重要性が増している。これは、インターネット研究において、グローバルなレ ベルでその挙動を把握する必要性と難しさが認識されてきたためである。 現在、WIDEでは、CAIDA (the Cooperative Association for Internet Data Analysis)とフランスのCNRS (The Centre National de la Recherche Scientifique)との間で計測に関する共同研究を行なっている。 2. CAIDAとの共同研究 CAIDAとWIDEプロジェクトは、2003年度から計測に関する包括的な共同研究を 行なっている。 主なテーマは、DNS計測、トポロジ計測、IPv6計測、BGP計測であり、年に2回 程度ワークショップを開催し、相互の活動を理解し協力体制を作っている。 2006年には以下の2回のワークショップを開催した。 ・第6回CAIDA-WIDE計測ワークショップ 2006年3月17-18日 USC/ISI ・第7回CAIDA-WIDE計測ワークショップ 2006年11月3-4日 UCSD/SDSC 2006年度の主な活動を以下にあげる。 ・ インターネット計測デーの実施 一年に一度、世界中の組織で同時に計測を行なおうという取り組 み。 今回はパイロットプログラムとして、2007年1月にCAIDAと WIDEが中心になり計測データ収集を実施した。 ・ 計測データの目録化 計測データの研究利用を促進するため、CAIDAが中心となり各組織 の持つ計測データを目録化するプロジェクトを進めている。 ・ トポロジ計測ツールの開発 scamperと呼ぶ並列tracerouteツールの改良を継続している。 ・ 地理情報を考慮したトポロジ解析 CAIDAの持つ広域tracerouteデータをもとにして、WIDEが地域別の ASトポロジの解析を行なっている。 ・ 広域計測基盤 主に開発途上国からの計測を行なう目的で、WIDEが小型計測箱を 設置、遠隔管理する計画を進めている。 2007年度もこれらの共同研究活動を継続し、研究者交換も実施する予定である。 3. CNRSとの共同研究 2006年より、フランスの大学連合であるCNRSとWIDEは、計測とモビリティの2 つの分野において3年間の共同研究を行なっている。 共同研究1年目の今年は、相互の研究を理解し交流を深めることに重点を置い てた活動を行なった。 計測グループでは、ゲームやP2P等の新規アプリケーションやセキュリティ攻 撃を計測、モデル化することをテーマとして共同研究を行なっている。 より具体的には、以下のような研究活動を行なっている。 (1)アプリケーション識別 フランス側 LIP6のSalamatian教授のグループが開発した、パケット の先頭数十バイトの情報からアプリケーションのタイプを識別する技 術を日本側のデータを使って検証を行なっている。 (2)時系列データ解析 フランス側 ENS LyonのPatrice AbryのグループとWIDEで、時系列ト ラフィックデータをモデル化し、定常時と異常時のパラメータ変化の 違いに着目し、異常を自動で検出する共同研究を実施中。 (3)ハニーポットによるセキュリティ攻撃の検出 フランス側LAAS Philippe Owezarski のグループのハニーポットを 日本側にも設置し、日仏で同時に観測する事によって、広域に渡る攻 撃を検出することや、地域差を明らかにする共同研究を実施中。 (4) 分散計測基盤 広域分散計測基盤について、双方で研究を進めている。 2006年から2007年にかけて3回のワークショップをモビリティチームと合同で 開催し、各自の研究の進捗報告や、学生交換の成果報告等を中心に発表を行な い、今後のスケジュールを確認した。 ・第1回CNRS-WIDEワークショップ 2006年2月8-10日 慶應大学三田キャンパス ・第2回CNRS-WIDEワークショップ 2006年11月18-19日 パリのCNRS本部 ・第3回CNRS-WIDEワークショップ 2007年1月19-20日 広島大学東千田キャンパス また、2006年度は以下の研究者交換を行なった。 ・ LIP6のSalamatian助教授の学生 Nageeb Earally が2006年6月から 9月まで日本に滞在。 奈良先端科学技術大学院大学 門林助教授の研究室で受け入れ、 アプリケーションの自動識別に関する研究を行なった。 ・ 奈良先端科学技術大学院大学の学生 益井賢次君が2006年9月から 12月までLIP6を訪問。 分散計測基盤について研究を行なった。 ・ ENS LyonのPatrice Abryの学生 Guillaume Dewaeleが2007年1月か ら3週間日本に滞在。 国立情報学研究所 福田助教授が受け入れ、 時系列解析に関する共同研究を行なった。 2007年度は、共同研究も2年目に入り、より活発な研究活動を行なって成果を 出していく予定である。 4. まとめ インターネットの計測研究では、国際的な協調による広域なデータ収集、しか も長期に渡る地道な努力が重要である。 今後は、これまでに築いた関係をベースに、さらに協調の幅を広げると同時に、 具体的な成果を出す努力をしていく。