WIDE Technical-Report in 2008 計測に関する2007年度国際協調活動報告 wide-tr-mawi-collaboration2007-01.txt WIDE Project: http://www.wide.ad.jp/ If you have any comments on this document, please contact to ad@wide.ad.jp. Title: 計測に関する2007年度国際協調活動報告 Author(s): 長 健二朗 (kjc@iijlab.net) Date: 2008-02-04 計測に関する2007年度国際協調活動報告 1. はじめに WIDEプロジェクトは多くの国際協調活動を行なっているが、近年は計測研究の 重要性が増している。これは、インターネット研究において、グローバルなレ ベルでその挙動を把握する必要性と難しさが認識されてきたためである。 現在、WIDEでは、CAIDA (the Cooperative Association for Internet Data Analysis)とフランスのCNRS (The Centre National de la Recherche Scientifique)との間で計測に関する共同研究を行なっている。 2. CAIDAとの共同研究 CAIDAとWIDEプロジェクトは、2003年度から計測に関する包括的な共同研究を 行なっている。 主なテーマは、DNS計測、トポロジ計測、IPv6計測、BGP計測であり、年に2回 程度ワークショップを開催し、相互の活動を理解し協力体制を作っている。 2007年度には以下の2回のワークショップを開催した。 ・第8回CAIDA-WIDE計測ワークショップ 2007年7月20-21日 UIC/EVL ・第9回CAIDA-WIDE計測ワークショップ 2008年1月19-20日 Univ. Hawaii 2007年度の主な活動を以下にあげる。 ・ 計測データの目録化 計測データの研究利用を促進するため、CAIDAが中心となり各組織 の持つ計測データを目録化するプロジェクトを進めている。 主に、2007年1月にCAIDAとWIDEが中心になり実施した、インター ネット計測デーに収集したデータの目録化を行なった。 ・ 地理情報を考慮したトポロジ解析 CAIDAの持つ広域tracerouteデータをもとにして、WIDEが地域別の ASトポロジの解析を行なっている。 ・ 広域計測基盤 主に開発途上国からの計測を行なう目的で、WIDEが小型計測箱を 設置、遠隔管理する計画を進めている。 ・ 研究者交換 CAIDAのBrad Huffakerが2007年8月から2カ月間日本に滞在し、 広域計測基盤に関して共同研究を行なった。 2008年度もこれらの共同研究活動を継続する予定である。 3. CNRSとの共同研究 2006年より、フランスの大学連合であるCNRSとWIDEは、計測とモビリティの2 つの分野において3年間の共同研究を行なっている。 共同研究2年目の今年は、相互の技術を組合せた研究への取り組みに重点を置 いてた活動を行なった。 計測グループでは、ゲームやP2P等の新規アプリケーションやセキュリティ攻 撃を計測、モデル化することをテーマとして共同研究を行なっている。 より具体的には、以下のような研究活動を行なっている。 (1)アプリケーション識別 フランス側 LIP6のSalamatian教授のグループが開発した、パケット の先頭数十バイトの情報からアプリケーションのタイプを識別する技 術を日本側のデータを使って検証を行なっている。 (2)時系列データ解析 フランス側 ENS LyonのPatrice Abryのグループと日本側国立情報学 研究所の福田准教授が、時系列トラフィックデータをモデル化し、定 常時と異常時のパラメータ変化の違いに着目し、セキュリティ攻撃等 を自動で検出する共同研究を行なった。 次のステップとして、日本側の蓄積データに含まれる異常トラフィッ クの目録化に着手している。 これにより既存データの研究利用の促 進が期待できる。 (3)ハニーポットによるセキュリティ攻撃の検出 フランス側LAAS Philippe Owezarski のグループのハニーポットを 日本側にも設置し、日仏で同時に観測する事によって、広域に渡る攻 撃を検出することや、地域差を明らかにする共同研究を実施中。 双方の技術を組合せより精度を高める研究を進めている。 (4) 分散計測基盤 広域分散計測基盤について、双方で研究を進めている。 2007年度は、10月にLyonでワークショップを開催し、研究の進捗報告や、学生 交換の成果報告等を中心に発表を行ない、今後のスケジュールを確認した。 また、2008年3月には、奈良先端科学技術大学院大学でワークショップの開催 を予定している。 ・第4回CNRS-WIDEワークショップ 2007年10月15-16日 ENS-Lyon また、2007年度は以下の研究者交換を行なった。 ・LIP6のSalamatian助教授の学生 Thomas.Silverston が2007年7月か ら9月まで日本に滞在。 東京大学で受け入れ、ピア・ツー・ピア型IPTVの挙動に関して、日 仏双方でデータを収集し解析を行なった。 ・慶應義塾大学の学生 金井 瑛君が2006年9月から11月までLAASを訪 問。 ボット検出手法について研究を行なった。 ・LAASのPhilippe Owezarski 氏の学生 Ion Alberdi が2007年12月に 3週間日本に滞在、慶應義塾大学の村井研究室で受け入れ、ボット 検出手法の研究を行なった。 ・ENS LyonのPatrice Abryの研究員 Guillaume Dewaeleが2007年8月 から3週間、2度目の日本滞在をした。 国立情報学研究所 福田准教授 が受け入れ、時系列解析に関する共同研究を行なった。 ・ENS LyonのPatrice Abryの研究員 Pierre Borgnatが2007年12月に3 週間、日本滞在をした。 国立情報学研究所 福田准教授が受け入れ、 時系列解析、特に長期的なトレンド解析に関する共同研究を行なった。 さらに2007年度は、以下の2本の共同執筆論文を国際会議で発表した。 Guilaume Dewaele, Kensuke Fukuda, Pierre Borgnat, Patrice Abry, Kenjiro Cho. Extracting Hidden Anomalies using Sketch and Non Gaussian Multiresolution Statistical Detection Procedures. ACM SIGCOMM2007 LSAD Workshop, Kyoto Japan. August 2007. Thomas Silverston, Olivier Fourmaux, Kave Salamatian, Kenjiro Cho. Measuring P2P IPTV Traffic on Both Sides of the World. CoNEXT Student Workshop, NY, NY. December 2007. 2008年度は、共同研究の最終年度であり、より活発な研究活動を行なって成果を 出していく予定である。 4. まとめ インターネットの計測研究では、国際的な協調による広域なデータ収集、しか も長期に渡る地道な努力が重要である。 今後は、これまでに築いた関係をベースに、さらに協調の幅を広げると同時に、 具体的な成果を出す努力をしていく。