WIDE Technical-Report in 2008 計測に関する2008年度国際協調活動報告 wide-tr-mawi-collaboration2008-00.txt WIDE Project: http://www.wide.ad.jp/ If you have any comments on this document, please contact to ad@wide.ad.jp. Title: 計測に関する2008年度国際協調活動報告 Author(s): 長 健二朗 (kjc@iijlab.net) Date: 2008-12-24 計測に関する2008年度国際協調活動報告 1. はじめに WIDEプロジェクトは多くの国際協調活動を行なっているが、近年は計測研究の 重要性が増している。これは、インターネット研究において、グローバルなレ ベルでその挙動を把握する必要性と難しさが認識されてきたためである。 現在、WIDEでは、CAIDA (the Cooperative Association for Internet Data Analysis)とフランスのCNRS (The Centre National de la Recherche Scientifique)との間で計測に関する共同研究を行なっている。 2. CAIDAとの共同研究 CAIDAとWIDEプロジェクトは、2003年度から計測に関する包括的な共同研究を 行なっている。 主なテーマは、DNS計測、トポロジ計測、IPv6計測、BGP計測であり、年に2回 程度ワークショップを開催し、相互の活動を理解し協力体制を作っている。 2008年度には以下のワークショップを開催した。 今回から韓国のCASFIチームも参加し、日米韓の連係を深め、共同研究に繋げ ていく予定である。 ・第10回CAIDA-WIDE-CASFI計測ワークショップ 2008年8月15-16日 Marina del Rey, CA 2008年度の主な活動を以下にあげる。 ・ インターネット計測デーの実施 2007年に引続き、インターネット計測デーを3月に実施した。 WIDEでは国際線の72時間のパケットトレース等を収集し公開した。 ・ 計測データの目録化 計測データの研究利用を促進するため、CAIDAが中心となり各組織 の持つ計測データを目録化するプロジェクトを進めている。 今年度は主に、2008年3月のインターネット計測デーに収集したデー タの目録化を行なった。 ・ 地理情報を考慮したトポロジ解析 CAIDAの持つ広域tracerouteデータをもとにして、WIDEが地域別の ASトポロジの解析を行なっている。 ・ 広域計測基盤 主に開発途上国からの計測を行なう目的で、WIDEが小型計測箱を 設置、遠隔管理する計画を進めている。 2009年度もこれらの共同研究活動を継続する予定である。 3. CNRSとの共同研究 2006年より、フランスの大学連合であるCNRSとWIDEは、計測とモビリティの2 つの分野において3年間の共同研究を行なっている。 共同研究最終年の今年は、相互の技術を組合せた研究への取り組みや、今後の 共同研究に繋がる議論に重点を置いてた活動を行なった。 計測グループでは、ゲームやP2P等の新規アプリケーションやセキュリティ攻 撃を計測、モデル化することをテーマとして共同研究を行なっている。 より具体的には、以下のような研究活動を行なっている。 (1)アプリケーション識別 フランス側 LIP6のSalamatian教授のグループが開発した、パケット の先頭数十バイトの情報からアプリケーションのタイプを識別する技 術を日本側のデータを使って検証を行なっている。 (2)時系列データ解析 フランス側 ENS LyonのPatrice Abryのグループと日本側福田助教授 が、時系列トラフィックデータをモデル化し、定常時と異常時のパラ メータ変化の違いに着目し、セキュリティ攻撃等を自動で検出する共 同研究を行なった。 次のステップとして、日本側の蓄積データに含まれる異常トラフィッ クの目録化に着手している。 これにより既存データの研究利用の促 進が期待できる。 (3)ハニーポットによるセキュリティ攻撃の検出 フランス側LAAS Philippe Owezarski のグループのハニーポットを 日本側にも設置し、日仏で同時に観測する事によって、広域に渡る攻 撃を検出することや、地域差を明らかにする共同研究を実施中。 双方の技術を組合せより精度を高める研究を進めている。 (4) 分散計測基盤 広域分散計測基盤について、双方で研究を進めている。 2008年度は、10月に東京でワークショップを開催し、研究の進捗報告や、学生 交換の成果報告等を中心に発表を行ない、今後のスケジュールを確認した。 また、2009年3月には、本枠組で最後となるワークショップをフランス、トゥー ルーズで開催する予定である。 ・第6回CNRS-WIDEワークショップ 2008年10月28-29日 NII, Tokyo Japan. また、2008年度は以下の研究者交換を行なった。 ・慶應義塾大学村井研の学生 空閑 洋平君が2008年7月から10月まで LIP6のTimur Friedman教授の研究室を訪問。 トポロジ探索手法に ついて研究を行なった。 ・東京大学江崎研の学生 肥村 洋輔君が2008年9月に約4週間ENS Lyonの Patrice Abry教授の研究室を訪問。統計的なモデルに基づく異常ト ラフィックの検出手法について研究を行なった。 ・フランス側計測グループのリーダであるKave Salamatian教授が 8月に約3週間日本に滞在して共同研究を行った。 以下はこれまでの日仏の共同執筆論文のリストである。 Guilaume Dewaele, Kensuke Fukuda, Pierre Borgnat, Patrice Abry, Kenjiro Cho. Extracting Hidden Anomalies using Sketch and Non Gaussian Multiresolution Statistical Detection Procedures. ACM SIGCOMM2007 LSAD Workshop, Kyoto Japan. August 2007. Thomas Silverston, Olivier Fourmaux, Kave Salamatian, Kenjiro Cho. Measuring P2P IPTV Traffic on Both Sides of the World. CoNEXT Student Workshop, NY, NY. December 2007. Pierre Borgnat, Guilaume Dewaele, Kensuke Fukuda, Patrice Abry, Kenjiro Cho. Seven Years and One Day: Sketching the Evolution of Internet Traffic. To appear in IEEE INFOCOM 2009. Rio de Janeiro, Brazil. April 2009. 2008年度は、共同研究の最終年度である。成果をまとめると同時に、今後もよ り活発な連係ができるような枠組を作る活動をしていく予定である。 4. まとめ インターネットの計測研究では、国際的な協調による広域なデータ収集、しか も長期に渡る地道な努力が重要である。 今後は、これまでに築いた関係をベースに、さらに協調の幅を広げると同時に、 具体的な成果を出す努力をしていく。